ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

秋風

暑い日が続くと、早く秋にならないかなあ、と思います。

秋風、というのはなかなか語感のいいことばだと思いますが、さて、辞書では何と説明しているのでしょうか。

 

  大辞林三省堂現代  秋に吹く風。


何ですか、これは。これでは秋風のさわやかさが伝わってきません。

 

  広辞苑  秋になって吹く風。

 

だから、夏の風とどう違うのか。そこを書いてほしいのです。

 

  明鏡  秋に吹く(涼しい)風

 

最低限、これぐらいは書いてほしい。なぜこう書けないのか。

 

  新明解  秋に吹く、肌寒い風。

 

これは行きすぎです。夏の暑さが好きなのでしょうか。

 

  -が吹く(立つ)〔=男女の間の愛情がさめる。何かの流行が下火になる〕 (新明解)

 

この表現のことが頭にあるからでしょうか。秋風のマイナス面を言っておきたい。

 

  学研現代  秋にふく風。[参考]「さわやかな、しかし無情な風」の感じをふくむ。

 

「さわやか」はぴったりですが、男女のことにつなげたいために「無情な風」というのはやはり言い過ぎです。「無情な風」って、どんな風なんでしょう?

 

  三国  秋にふく、さわやかなひやりとした感じの風。


これがいいですね。夏が過ぎてさわやかさを感じつつ、「ひやり」という冷たさもある。これだけで、十分男女の話にもつながります。

それにしても、早く秋風が吹かないものでしょうか。