ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

あいだ

ずいぶんサボっていましたが、久しぶりに。

「あいだ(間)」ということばをどう説明するか。わかりきったようなことばだからこそ、難しい。

まず面白いのは岩波国語辞典です。

 

  ①これとそれとに挟まれたところ。

   ア 並ぶ(並べて考える)これとそれとが挟む位置の部分。

    「大阪と広島(と)の-の都市」「今日から三日の-安売りをする」(以下略)

 

なかなかいいと思いませんか。「これとそれと」って、どれ?

感覚的にわかりやすくしようと試みた、面白い語釈の書き方ですが、「今日から三日の間」の「これとそれ」って何なんでしょうか。

 

次は新明解国語辞典

 

  ①A 直接続かない二つの点(物)の非連続部分に存在する空間・時間など。

    「木立の-(=すきま)から空がのぞく/-(=絶え間)を置いて痛む
   B 問題や関係などの有る双方に属さないもの。あい。

    「-(=中間)を取る/-に入って(=仲裁者として)丸く収める/-に立つ(=仲介する)」(以下略)

 

基本的な語ほど説明が難しくなりがちなのですが、これはまた。「非連続部分に存在する空間・時間」というのがすごいですね。

しかし、「直接続かない二つの点(物)の非連続部分」というと、例えば数直線上の二点、「1と2の間」の場合、「非連続」なのかしら。1と2が「直接」続かないのは確かですが、数直線というのは連続していないのか、、、、。実数の連続性とか何とか、いや、これは話が難しくなりすぎますか。

さて、Bのほうの、ケンカをしている二人の「間に入って」でも、関係者の「間に立つ」でも、単に「問題の有る双方に属さない」だけでは説明として足りないんじゃないでしょうか。

まさに、「二人の間」に「入る」んです。「双方に属さない」だけなら、どこでもいいことになってしまいます。

確かに、間に入ったり立ったりする人は「双方に属さないもの」ですが、ここで説明すべきはその「人」ではなく、その「間」そのものなのです。

「双方に属さないもの」が、「双方が属している」空間、というか、場というか、そこに入ったり立ったりするから、「間」が使われるのです。

結局、Aのように(抽象的な)「空間」と言わざるをえないのではないでしょうか。

 

 もう一つ、三省堂国語辞典。

 

  ① 二つ(以上)のものをへだてているひろがり「木々の-を鳥が飛ぶ・都市の-を鉄道で結ぶ」

  ② あいだ①にあるものごと。中間。「二つの駅の-で事故があった・-を取って三千円!」(以下略)

 

①のほうはいいのですが、②と①の違いがわかりません。「都市の間」と「二つの駅の間」はどう違うのか。「ものごと」というのもどうも。「あいだ」は「ものごと」と言えるか。「事故」ならものごとですが。

 

どうも、これらの辞書の説明を読んでみても、「あいだ」の意味・用法がよりよくわかったという気になれません。

「あいだ」を国語辞書でわざわざ引く人は、あんまりいないと言っていいでしょうか。だからまあ、どう書いても実害はない?