このところ新明解国語辞典の副詞を見ていますが、岩波国語辞典が相変わらずなのでちょっと寄り道を。
どうにか 〘連語〙何とか。まがりなりに。「―ならないか」「―間に合います」「―難なんを免れた」 岩波
「どうにか」を「なんとか」「まがりなりに」で単に言い換えています。これらの語がわかれば、「どうにか」の意味用法がわかるようです。
では、「なんとか」は。
なんとか〘連語〙②どうにか。「―都合をつける」「まがりなりにも―完成した」 岩波
おやおや、「なんとか」は「どうにか」です。(①は別の用法です)
例文に「まがりなりにも」が使われています。つまりこの例文は、
まがりなりにもなんとか(=どうにか)完成した
で、同じような意味の語が連続しています。
二つの語が「完成する」という述語を修飾しているのですから、それぞれの語の違いが何かあるはずです。それが何かを知りたいのですが。
さて、「まがりなり」とは。
まがりなり 曲がった形。不完全な形。「―にも」(まともでないにしても、どうにかこうにか) 岩波
「まがりなりにも」は「まともでないにしても、どうにかこうにか」です。
どうにかこうにか 〘連語〙「どうにか」を強めた言い方。 岩波
結局、「まがりなり」も「どうにか」です。
「なんとか」の例文、「まがりなりにもなんとか完成した」を言い換えると、
まともでないにしても、どうにかこうにか、どうにか完成した
となります。「まともでない」ことはわかるのですが、その後がまったくわかりません。(「どうにか」というのは、「なんとか。まがりなりに。」ですから。)
なお、「まがりなり」の基本的な意味である「曲がった形。不完全な形。」というのは一つの具体的な情報ですが、「どうにか」の説明としても有効でしょうか。
残念ながら、「どうにか間に合います」という例を、「曲がった形。不完全な形。」で解釈できるとは思えません。
以上、岩波には「どうにか」「なんとか」の意味それ自体についての情報はまったくありません。(これは「国語辞典」でしょうか?)