ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

赤い

「赤い」について一言書くのを忘れていました。三省堂国語辞典から。

 

  ①赤の色だ。「赤う(アコ)うございますね」

 

「赤の色だ」にも不満があるのですが、それはおいておくとして、唯一の用例が「赤うございますね」でいいものでしょうか。

もっとふつうの例ではつまらないということでしょうか。

  

  赤の色が認められる状態だ。「-夕日が沈む」 [新明解]

   赤の色をしている。「━風船[夕日]」 [明鏡]

 

夕日と風船。この「赤い風船」は、フランスの詩情あふれる映画のイメージか、それとも加藤登紀子の悲しい歌か。とにかく、具体的な何かです。

「赤うございますね」と言われても、一体何が赤いのか。イメージの浮かびようがありません。

せめて、「夕日が赤うございますね」ぐらいにしてほしいところです。

 

それと、「赤い」→「赤う」の形の変化の説明はどこにあるのか。中学生にはなじみのない形でしょう。

あちこち探してみると、巻末付録の「形容詞活用表」の解説、「形容詞の活用について」(p.1704)に、

 

   連用形が「ございます」などに続くときは音便形「う」を使うが、次の語では、語幹の音の一部も変わる。

   ・語幹の末尾の母音がアとなるもの。例、「赤い」は「あこう」、「早い」は 「はよう」。

 

という説明があります。ここを見るとわかる。しかし、中学生はどうやってここにたどりつくのか。

やはり、突然「赤うございます」なんて例は出さないほうがいいんじゃないでしょうか。