あげる
前回の記事の続きで。
あおむける ①表面を上へ向ける。(からだの)腹のがわを上にする。②顔を上げる。(⇔うつむける)[名]仰向け。「-になる」 三省堂国語辞典
この②の「顔を上げる」というのは、「あおむける」動きの例として、まあ、そうなんだろうと思うのですが、「あげる」の項目を見ると、
上げる ①上のほうへ動かす。「頭を-」
とあります。
「あげる」の一般的な意味が「上のほうへ動かす」のだというのはいいとして、この用例の「頭を上のほうへ動かす」ことは、ふだんの、前を向いた状態からはできないのじゃないでしょうか。(背伸びする?)
前を向いた状態から、上を見たとしても、それは「頭を上のほうへ動かす」ことにはならない。「顔が上を向いた」だけですよね。頭は、「後ろに倒れる」ので、むしろ低くなってしまう。(身長を測るとき、上を向いたら、低くなりますよね)
つまり、「頭を上げる」というのは、頭を「前に下げた状態」から、前を向くようにことを意味するわけです。(「あおむける」の新潮現代の語釈に「裏返しや横向きになっているものを」という説明がありましたが、それと同じような、「ふだんとは違った状態から」という前提が必要な表現です)
つまり、「手を上げる」とか「レバーを上げる」のような「上の方へ動かす」ことを表すというより、「前に向ける」ことを言うのです。
では、上の②の「顔を上げる」とはどういうことか。こちらの場合は、確かに、前を向いた状態より顔の位置が少し高くなると言えるでしょうが、「顔を上げる」という表現で言いたいことは、「顔を上の方へ動かす」ことではありませんよね。「上を向く」ことですね。
追記:2020.11.8
久しぶりに読み返してみて、最後の所がおかしいように感じました。
「顔を上げる」という表現で言いたいことは、「顔を上の方へ
動かす」ことではありませんよね。「上を向く」ことですね。
「顔をあげる」も、「頭をあげる」とおなじで、下を向いていた人が前を見るときに使えますね。「上を向く」とは限らない。
では、「歩いているときに飛行機の音が聞こえたのでそちらを見上げた」場合は何と言うか。「顔をあげて空を見た」のか、「頭をあげて」か。
私は「顔をあげて」だと思うのですが、「頭をあげて」でもいいか。
もう一度整理すると、
頭をあげる 顔をあげる
という表現は、
下を向いていた状態から前を見る状態にする
前を見ていた状態から上を見る状態にする
下を見ていた状態から上を見る状態にする(三国「あおむける」②?)
のどれ(とどれ)に当たるか、という問題です。
何人かの人に聞いてみたいですね。