ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

つぎは「おや」の話。

 「おとな」などは新明解がよかったのですが、「親」では新明解の記述がちょっと不十分です。

 

  親 その人を生んだ(と変わらぬ情愛を持って養い育ててくれた)一組の男女。

    〔広義では、祖先・元祖を指す〕    新明解

 

 「男女」と言ってしまうと、人間限定で、動物ははじかれてしまいます。限定しすぎです。

 

   子を産んだり育てたりするもの。父と母。人間のほか、広く動物についてもいう。
                        明鏡

   子を産んだり、育てたりする人。父母、養父母。人間以外の動物にもいう。

                        現代例解

   父と母。生物の、子・卵を産んだもの。    旺文社

   ① 子を生んだ人、または、他人の子を自分の子として養い育てる人。実父母・養父母の総称。《親》「生みの-より育ての-」 「養い-」         
   ② 子をもっている生物。 《親》 「 -鳥」    大辞林

   1 (親)子を生んだ人。父と母の総称。また、その一方。養父母などにもいう。また、人間以外の動物にもいう。「実の―」⇔子。           大辞泉

 

 新明解も「広義では」のところに動物を入れるべきでしょう。
 
   それを生んだもの。または、それを子として養うもの。父と母との総称。 岩波
 
 岩波は語釈では動物に触れませんが、例として「-犬」をあげています。

 さらに、動物以外でも「親芋」などと言うこともあるので、

  

  子をもつ人。子をもうけた男女。父母。[参考]人間以外の生物にもいう。  学研現代

   ①子(である自分)を生んだ人。また、育てた人。父母。(⇔子) [略] ③〔動植物の〕子をふやすもとになるもの。    三国

 

三国ははっきり「動植物」と書いています。植物は「子を生む」わけではありませんから「子をふやすもとになるもの」と回りくどい言い方をしていますが、いろいろ考えていることがわかります。


 新明解も、「親」の次の項は「親芋」なので、その「親-」の使い方に、すぐ前の項を書く時に気付けばよかったのですが。