三国がいい例を。ダメなのは岩波、明鏡、新明解などです。
アダルト〔名ノナ〕成人。おとな。▽adult 岩波
項目がないよりまし、という例。用例なし。
外来語が使われるのはなぜなのか。意味の近い和語・漢語があるのになぜその外来語が使われるのか。そこについて何も考えていない。まあ、岩波はそういう辞書です。
名・形動 おとな。成人。「━な雰囲気」「━ビデオ(=成人向けのビデオソフト)」「ヤング━」
明鏡
用例が3つあるのはおおいにけっこうなのですが、その3つの例で「アダルト」の意味合いが違うのに、そこを解説しない。
これもいつも言っていることですが、こういう用例は、元々その語の意味・使い方を知っている人が、その用例を見て「ああ、そうだな。そういう使い方があるな」と確認するための用例にすぎません。
そのことばを知らなかった人が、その語釈と、用例を見て、「ああ、こういう意味で、こういう使い方をするのか」と新たに知るための役には立ちません。
〔adult=おとな〕〔服飾・映画などで〕成人(向き)。「-のための雑誌/-ファッション」
新明解
これだと、一つの用法の例にかたよってしまいませんか。
では三国。
1おとな(用)。「-ファッション」2〔性をあつかっていて〕成人向けであること。「-DVD」
(形動ダ)成熟した。「-な感じの女性」
名詞の用法を2つに分けます。「おとな(用)」と「成人向け」というのは、それだけ見るとなんだかはっきりしませんが、まあ、いいとしましょう。「性をあつかっていて」というところがはっきり書いていていいと思います。
形容動詞の用法も別に立てていて、面白いです。私には「アダルトな感じの女性」というのがどういう女性なのか、いまひとつわかりませんが、「色っぽい」ということ? すみません。縁がないもので。
それとも、「独立した個性を持つ、知的な魅力がある」というようなこと?
「成熟した」という語釈は、どのくらいの年齢の女性に関して言えるのか。また、どういう意味で「成熟する」のか。ふーむ。まったく私の不得意な分野ですね。これ以上余計なことを言うのはやめましょう。
小学館日本語新は、「成人向け」に関してもっとはっきり書いています。
1成人。大人。また、成熟しておとなっぽいさま。[例]アダルト向きの店/ヤングアダルト/アダルトな雰囲気のドレス。2(成人向けの意で)ポルノの意を表す。[例]アダルトビデオ。
小学館日本語新
「アダルト」とは「ポルノの意」です。
ついでに、学研現代新の誤植を。
「アダルト」の項を見ているうちに気づいたものです。
アダルト おとな。成人(向けであること)。「-ファッション」「-ビデオ」
▽adult -チルドレン 肉体的・精神的な暴力を加えたり、過保護で
あったりするの親のもとで育ち、精神的後遺症に悩む人。略称AC。
▽adult children 学研現代新
「アダルト」の項は明鏡と同じようなものですね。よろしくない。
小見出しの「-チルドレン」の中の「~するの親」の「の」は不要です。つくづく校正は難しいものだと思います。