ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

エアゾール・エアターミナル

新明解国語辞典第八版の項目を検討します。このブログで以前とりあげたものです。
(2019-10-31 エアゾール・エアターミナル)

今回は外来語の原語の問題です。

まずは「エアゾール」。新明解第七版(と三国)が他の辞書とちがいます。

 

   エアゾール  和製洋語  aero + sol  新明解第七版
 
新明解第七版では「和製洋語」とされていました。他の辞書はほとんど「英語」です。

新明解の八版では英語とされています。「改訂」されたわけです。
英語の辞書に載っている語ですから、たぶん、それでいいのでしょう。
(三国は「ドイツ語」としています。日本語に入ったのはドイツ語からだ、という可能性はあります。それでも、英語にしろ、ドイツ語にしろ、「和製洋語」ではありません。)

 

次は「エアターミナル」です。

 

   エアターミナル 〔和製英語air+terminal〕空港内の、乗降客が必要な手続きをし、また、送迎にも使用される建物。「東京シティー-」   新明解第七版・八版

 

八版での「改訂」はありませんでした。

他の多くの国語辞典は「英語」説です。
英和辞典を見ても、英英辞典を見ても、ちゃんと項目があります。

 

    air terminal 1 a building at an airport that provides services for passengers travelling by plane
    2 (Br E)an office in a city from which passengers can catch buses to the airport
                          OALD 6th

 

ですから、「和製英語」ではありません。明らかです。

そして、「エアターミナル」には二つの用法があるのですが、新明解は一つしか説明していません。

 

   1 空港内にある、旅客が発着手続きなどをするための建物。
   2 空港から離れた市内にある、空港へのバス・鉄道の発着所。シティーエアターミナル。    大辞泉 

 

新明解の説明は、大辞泉の「1」のほうだけですね。

さらに悪いことに、新明解の用例「東京シティー-」は、東京箱崎にあるバスターミナルなので、2番目の意味です。空港内の建物ではありません。語釈に合わない用例になってしまっています。

ということで、新明解の「エアターミナル」の項は「改訂」が必要です。

 

追記 20.12.27

「エアゾール」に関する新明解八版の「改訂」は、上に述べただけではありませんでした。

同じ aerosol という英語に対して、もう一つ「エアロゾル」という項目を新しく作っています!

これはどう考えたらいいのか、私にはちょっとわかりません。

 

   エアゾール〔aerosol〕微粒子となった固体・液体が空気やガスの中に浮遊・分散した状態。また、そのような状態にして容器から噴霧するようにした薬品。化粧品・殺虫剤・塗料などに使用。

   エアロゾル〔aerosol〕気体中に微小な液体または固体が分散している混合体。例、霧や煙など。エーロゾルとも。  新明解第八版 

 

両者の前半は同じ状態のものを指しているように思うのですが。