三省堂国語辞典第八版が第七版からどう変わったか、このブログでこれまでにとりあげてきた項目を見てみます。
外来語の原語問題です。その外来語はどこの言語から来たのか。
「2017-10-27ドライブウェ-」という記事で、原語は英語か、それとも和製語かということを問題にしました。色々な辞書を引いてみました。英語の辞書も。
三国第七版は、
ドライブウェー〔和製driveway〕ドライブ専用の舗装道路。 三国第七版
和製語という判断でした。
(私の結論は、英語だろう、でした。)
第八版は、
ドライブウェイ〔driveway〕ドライブ用の自動車道路。ドライブウェー。 第八版
英語になっていました。
「2017-10-31ウインナー」では、「ウインナー」の原語がドイツ語であることはいいとして、「ウインナーコーヒー」と「ウインナーソーセージ」はどうか、ということを書きました。
和製語とする「大辞林グループ」と、英語から来たとする「大辞泉グループ」に分かれるという興味深い話になりました。
三国第七版は、
ウインナ(ー)〔ドWiener〕[1]←ウインナソーセージ。[2](造語)〔ウイン
ナ(ー)-〕ウィーン〔=オーストリアの首都〕の。「-ワルツ」
・-コーヒー〔Viennese coffee〕あわだてた生クリームをたっぷり浮かべた
コーヒー。
・-ソーセージ〔Vienna sausage〕羊の腸につめた、指ほどの太さのソーセ
ージ。 三国第七版
英語からとはするのですが、なぜか「ウインナー」の部分の英語が違っていて、個性的でした。
第八版では、
・-コーヒー〔Vienna coffee〕あわだてた生クリームをたっぷり浮かべた
コーヒー。 三国第八版
コーヒーのほうがソーセージに合わせた形になっていました。これは、「大辞泉グループ」と同じになったということです。
ネット上で引ける「英辞郎」というもので調べてみると、
Viennese coffee ウイーン風のコーヒー、ウインナー・コーヒー 英辞郎
とありました。
英語にこの言い方があるとして、さて、それが日本語に入って「ウインナ(ー)コーヒー」となったかどうか、です。発音がずいぶん違いますから。(Vienna coffee は英辞郎にはありませんでした。)
「-ソーセージ」も英辞郎で見てみました。
Vienna sausage《a ~》フランクフルト・ソーセージ◆薫製されたビーフやポーク
のひき肉のソーセージを指す。ヨーロッパに比べて、アメリカのものはやや
短くて太めである。◆【語源】フランクフルト出身で、ウイーンに移り住んだ
肉屋によって発明されたことから。◆【同】wiener sausage
wiener sausage《a ~》フランクフルト・ソーセージ◆【同】Vienna sausage
◆Wiener sausageとも表記される。 英辞郎
さて、こちらはどうなんでしょうか。この英語から入ったのかどうか。
これはなかなか難しそうです。
「2017-10-28 ウイニング-」では、「ウイニングショット」「ウイニングラン」などの語が英語かどうかを考えました。
三国は、七版と八版で大きな違いはありません。どちらも英語とします。
ウイニング-(造語)〔winning〕勝利を得る。ウィニング。
・-ショット〔winning shot〕〔球技〕勝利を決定づける一打。きめだま。
・-ラン〔winning run〕①〔野球など〕決勝点。②〔スポーツ〕観客の称賛に
こたえるため、競技場を一周すること。 三国第八版
新明解は、違います。
-ショット〔和製英語 ←winning+shot〕1〔テニスで〕それによって必ず勝つ
という、得意の打ち方。決め球。2〔野球で〕その投手が打者を打ち取るのに
最も得意とするたま。決め球。 新明解第八版
「-ラン」の①は三国と同じ「決勝点」で英語としますが、②は「日本語用法。英語ではvictory lapという」と書いています。(七版・八版とも同じ)
明鏡は新明解と同じ考えで、岩波は「ウイニング-」という項目がありません。
「英辞郎」には、
winning shot
1《野球》決勝点となる[につながる・をもたらす]一打
2〈和製英語〉《野球》ウィニングショット◆【標準英語】out-pitch ;
strikeout pitch
winning run
1《野球》決勝点、サヨナラのランナー
2《スポーツ》独走、連勝
・X team's winning run ends as Y team claim victory at the Monaco GP. : モナコ
グランプリはYチームが優勝、Xチームの独走は止まった。
3〈和製英語〉ウィニング・ラン◆【標準英語】victory lap 英辞郎
とありました。
どうも三国は分が悪いようです。