ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

三国第八版:イー E

三省堂国語辞典第八版が第七版からどう変わったか、このブログでこれまでにとりあげてきた項目を見てみます。

 

今回は「イー E」です。前に、「2017-7-9  E」という記事を書きました。

niwasaburoo.hatenablog.com

第七版では、「東」を表す記号とあります。そこで、他の方角はどうかと思うと、

  東西南北:EWSNの記述が揃っているかどうかを見てみると、W、Sでは方角に
  ついての記述なし。エヌは項目自体なし。

という結果でした。

第八版では、W、Sにはそれぞれ「西」「南」とあり、Nの項目もできて「北」とあります。

きちんと改訂されていました。

 

もう一つ、七版に

  〔音〕ハ長調のミ。ホの音階。「-マイナー」

とありましたので、他の音名を見てみました。

  音楽で、「E」は「ハ長調のミ」であるらしい。では、ハ長調のレやファは、D・
  Fなのか。
  AからGを見てみると、A・B・C・F・Gには音名としての記述がありません。
  Dは項目自体なし! なぜEだけに音名があるのか。

 

第八版ではどうなったでしょうか。

「D」という項目はできたのですが、AからGまで、E以外の項目には音楽の話はありませんでした。

なぜだかわかりません。

 

新明解は、前の第七版ではアルファベットの項目が全然ダメだったのですが、第八版で大きく書き加えられました。

このことは、「2020-11-29 イーなど・エッチ」に書きました。

niwasaburoo.hatenablog.com

上の記事に、次のように書きました。

  今回の新明解の改訂でいちばん大きく変わった項目は、これらのアルファベットの
  項目ではないかというのが、私の個人的な感想です。それまで全く存在しなかった
  いくつかの項目が、多くの行数を費やして記述されることになったのですから。
  「エー A」が12行、「シー C」は9行。「ディー D」は7行。「エフ F」は13行。
  「ジー G」は9行。「エイチ H」は10行。それぞれ、かなり徹底的に書いていて、
  面白いです。(「エフ F」は七版でもなぜか詳しかったのですが、八版ではさらに
  詳しくなりました。)

この改訂で、音楽での使われ方も詳しく書かれるようになりました。

 

  エー 7〔音楽で〕イの英語音名。ドイツ語音名のアー。イタリア語音名のラ。
                                                         新明解第八版

 

なぜかドイツ語やイタリア語まで書いてあって、懇切丁寧です。

 

なぜ、三国では 第八版でも音楽のことが書かれているのは E だけなのか。

方角のことは重要だけれども、音楽のことは重要でないと考えたのでしょうか。